春季集中講座 「食と農と環境の未来を、土と肥料と微生物の専門家から学ぶ」

※2024年春の募集は終了しています。

 

講座概要

世界人口が80億人を超え、世界全体では温暖化をはじめとする環境問題が顕在化し、国内ではいっこうに上がる気配の無い食料自給率、、、という環境の中に私たちは生きています。

環境分野では「持続可能」「サステナブル」「SDGs」といったワードが飛び交う中、ストローを紙にしてみたり、時々オーガニックの豆腐を買ってみたりと個人的に活動してはみるものの、本当に意味があるのかはよくわからないまま生活している人も多いと思います。企業も上記のキーワードに乗って「環境にやさしい」活動を次々に繰り出していますが、果たして本質的なのか疑問なものも多くみられます。

農業分野においても「持続可能な農業」に向けて国も動き出していますが、有機農業がよいのか、化学肥料を使った慣行栽培がよいのか、不耕起や自然栽培がいいのかそのミックスなのか、混とんとした状況です。

これらの環境問題と食料農業問題は密接に関係しています。例えば農地にするために森林を切り開いたり、トラクターが化石燃料を使ったり、肥料が流出して富栄養化を引き起こしたりします。
環境問題を悪化させずに増大する人口を養い、心身ともに豊かな社会を築いていくにはどんな農業をしてどんな世界を目指せばよいのでしょう。

答えを出すのは簡単ではありません。
でもすべての人が関わる問題です。

簡単に答えの出ない問題についてみなさんといっしょに考えたいと思い、この講座を準備しました。
農業の土台であり、森林減少や地球温暖化とも密接に関わる土壌学。
人口増加を支えてきた化学肥料に関わる肥料学、植物栄養学。
環境負荷の低い自然栽培の可能性を示す植物生態学。
これら学問の専門家から直接話を聞き、実際に自然の土壌を観察しながら未来を考えてみませんか。

学問的な視点に加えて現実の食料生産の姿を知ることも大事と考え、有機栽培や慣行栽培(スマート農業を含む)の農業現場見学も行います。

 

カリキュラム

現地講義3回(森林・農場)+ 対面講義1回 + オンライン4回 の計8回となります。
※すべての講義は録画し、欠席者へは後日期間限定でご覧いただけるようにします。

日程:
一回目 2024年3月24日(日)10時~15時頃(森林にて現地講義)
二回目 2024年3月31日(日)10時~12時(オンライン講義)
三回目 2024年4月28日(日)10時~12時(対面座学講義)
四回目 2024年5月  4日(土)10時~12時(オンライン講義)
五回目 2024年5月12日(日)10時~12時(オンライン講義)
六回目 2024年5月18日(土)10時~12時(オンライン講義)
七回目 2024年5~7月 日付未定 農園見学(有機栽培)
八回目 2024年5~7月 日付未定 農園見学(スマート農業)

 

一回目(森林でのフィールドワーク+対面座学 約半日)

「農業の基礎である土壌について、自然にできる土を観察することで学び、考える。」

※昨年開催の様子はこちら
京都大学大学院 地球環境学堂の真常仁志准教授の指導の下、京都府内の林にて実際に土を掘り断面を調べます。断面からは数千年の土の歴史が見られます。またSDGsでも話題の炭素貯留(CO₂を土のなかに閉じ込める温暖化対策)が実際に起きていることを目で見て、手で触って学ぶこともできます。真常先生からは森林の土と地球全体の環境との関係を教えてもらいます。またどのようなメカニズムで自然の土ができるかを学んだ上で、農業においても土が持続的であるためにはどうすればよいかを皆で考えます。
これからの農業だけでなく環境問題を考える上での基礎ともなることでしょう。

森林でのフィールドワークと土壌断面観察 真常仁志 先生

【真常仁志先生プロフィール】
京都大学大学院 地球環境学堂 准教授
専門は土壌学。森林から田畑、砂漠まで世界中の土壌を研究対象としている。マラウイやシリア等乾燥地での持続可能な農業の実践も行う。

 

二回目(オンライン講義+質疑応答 約2時間)

「世界の環境問題と農業の関係について土壌を中心に学び、考える」

一回目に引き続き、農業の基礎である土壌について考えます。二回目は世界の様々な土壌と農業の歴史を学びます。日本だけでなく世界中で土の問題が発生しており、農業を続けていくことの妨げになっています。例えば、塩害、砂漠化、土壌流出、などです。これからも土を使って農業を続けていくために、また未来の持続可能な農業を考える上で、過去の世界の土壌と環境問題と農業の関係をおさえておくことは大事です。
※参考図書:『土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて』藤井一至著 光文社新書
講師は古谷壮弘です。

【古谷壮弘プロフィール】
農学校スモールファーマーズカレッジ専任講師
土壌医(土壌医検定1級)
農水省「土づくり専門家リスト」掲載
地球環境学修士(京都大学・陸域生態系管理論分野)

 

三回目(対面講義+質疑応答 約2時間 京都市内にて)

「化学肥料の専門家から有機農業はどうあるべきかについて学び、考える」

※昨年開催の様子はこちら
京都大学名誉教授の間藤徹先生から学びます。実は化学肥料の研究は自然を深く知ることから始まります。化学肥料が何か自然とは真逆の存在であるかのように思われることもありますが、自然界のメカニズムを知らないと植物を成長させることはできません。その植物と栄養との関係を40年以上にわたって研究されてきた間藤先生から自然の養分の循環を学びます。先生は化学肥料の専門家でもありますが有機農業についても独自の視点で評価されています。植物の仕組みと肥料について知り尽くした研究者の考えるこれからの食料と農業と環境のあり方を学び、近い将来100億人を超えると言われる人類がどのように持続可能に生きていくのかを考えます。
先生から講義の後、質疑応答の時間でさらに理解を深めていただくことができます。

間藤徹 先生

【間藤徹先生プロフィール】
京都大学名誉教授
元日本土壌肥料学会会長
近畿土壌医の会会長
専門は植物の栄養に関する研究。 京都市内の農業者の土壌診断や指導など現場における土づくりにも造詣が深い。

 

四回目(オンライン講義+質疑応答 約2時間)

「慣行農業と有機農業のメリットとデメリットについて改めて考える」

慣行農業(化学肥料や農薬を使う)と有機農業は対照的な農法です。環境への影響、おいしさ、収穫量など、どちらの農法が優れているのか様々な議論があり、結論も様々です。
第三回目で化学肥料の研究者の視点から有機農業を考えたことをふまえ、さらに慣行農業と有機農業の違いやメリット、デメリットについて考えてみます。
この回では、さまざまな研究や書籍を参考にして、有機農業と慣行農業の違いを学んだあと、みなで議論して理解を深めます。
講師は古谷壮弘です(二回目と同じ)

 

五回目(オンライン講義+質疑応答 約2時間)

「自然栽培の研究者から無施肥や無農薬の可能性について学び、考える」

※昨年開催の様子はこちら
奇跡のリンゴで有名な木村秋則さんの自然栽培を解説した『すごい畑のすごい土』の著者である弘前大学名誉教授 杉山修一先生から学びます。無施肥や無農薬での栽培は事例が少なく、うまくいく仕組みがわかっていませんでしたが近年の研究により少しずつ解明されつつあります。そのカギはおそらく微生物にあり特定の土壌微生物によって養分を補い、体内に共生している微生物により病害虫の被害が抑えられている可能性が示唆されています。一般的な農学とは異なる視点から持続可能な農業と自然の生態系について学び、未来の農業技術や地球環境について考えます。
先生から講義の後、質疑応答の時間でさらに理解を深めていただくことができます。

杉山修一 先生と主な著書

【杉山修一先生プロフィール】
弘前大学名誉教授
専門は植物生態学。著書は『すごい畑のすごい土』(幻冬舎新書)、『ここまでわかった自然栽培』(農山漁村文化協会)。
無肥料・無農薬栽培の研究における第一人者

 

六回目(オンライン講義+質疑応答 約2時間)

「持続可能な農法って結局何?考えよう。」

ここまでの5回で農業が成り立つ基礎である土壌、肥料、微生物、などについて科学的に学んで議論してきたことをふまえて、「農法」について考えます。
大きなくくりとしては有機農法、慣行農法、自然農法がありますが、さらに細かく分類することもできます。菌ちゃん農法、炭素循環農法、〇〇微生物農法・・・などなど。様々な農法が成り立つ理屈を炭素や窒素の循環の視点から理解した後、みんなで議論します。各農法の優劣については話しません。みなで議論する中で各自の理解を深める回です。
講師・コーディネーターは古谷壮弘です(二回目と同じ)。

 

七回目・八回目(農場見学(有機農業・スマート農業 各約2-3時間))

「リアルな現場を見る」
六回目までの講義やディスカッションを経て、どんな農業が持続可能かを学問的に考える基礎ができています。その状態で現場を見学します。現実には様々な制約がある中、有機農業、スマート農業、それぞれの農家が経営・生産性・持続可能性を考えて日々農業をしています。学問的な基礎をどのように現実に即していくか、、あるいは自分の農業や仕事や私生活に生かしていくか、、みなさんがそれぞれ考える機会になればと思います。

※開催日は調整中です。5月~7月の土曜日か日曜日で予定しています。関西圏内の農場を予定しています。現地参加が難しい場合は後日録画を見て頂くことができます。

コーディネーターは岩崎吉隆です。

【岩崎吉隆プロフィール】
農学校スモールファーマーズカレッジ代表
農業経営アドバイザー(日本政策金融公庫)
京都大学大学院 地球環境学堂 博士後期課程在学(持続的農村開発論分野)
京都市内の畑4反、田2反で自らも農家としてニンジン等を栽培し保育園給食や個人へ出荷している。

 

参加資格

ありません。興味を持っている方でしたらどなたでも大丈夫です。

 

その他

・定員は15名を予定しています。(最少催行人数5名)
・オンライン講義はZOOMを利用します。各自でご準備下さい。
・フィールドワークは小雨決行ですが、天候等により日時が変更される場合があります。
・すべての講義は録画しますので後日アーカイブとして一定期間視聴いただくことができます。

講座費用

8万8千円(税込み)
※交通費や食費は各自でご負担ください。
※全8回分の参加費となります。
※一度お振込みいただいた費用の返金はできません。
※3月14日までに最少催行人数に満たない場合は開催を中止する可能性がございます。その場合に限りご返金致します。
※銀行振込みとなります。振込手数料はご負担ください。

申し込みはこのページ最下部の「お申込みはこちら」からお願いします。

参加者の声

昨年参加された方の感想の一部です。個人情報がわからないように一部改変しています。

・今まで色々な講習会に参加してきましたが、多くが身近な課題解決の参考になるようなものでした。今回の講座も同様のイメージでいたのですが、いざ受講していくと新たな知見を得られたことは当然のことながら、大局的に農を見る視点に誘導させられたことは新鮮でした。
戸惑い半分新鮮さ半分のモヤモヤスッキリの交錯した楽しい講座でした。ありがとうございました。
実際に農に携わるようになるといつの間にやら視野が狭くなって目先のことに捉われる日々になってしまいます。時々でもそこから引き出し上げてくれるこのような講座は大事だと思います。(S氏 自然農法実践者)

・今回、講義を受けるだけでなく実地での体験やディスカッションも行ったことで、自身の家庭菜園での野菜づくりに関するスタンスを整理するきっかけにもなり、大変興味深い時間を過ごすことができました。(T氏 会社員)

・土壌・肥料の基礎知識が学べたらと思いましたが、地球規模での今の現状がよくわかりました。
色々な職業の方がおられ、私たち農家の立場からの考えとは異る視点、観点からの意見があり刺激をうけました。
もっと色々な知識を得て行動しなければと感じました。(N氏 農家)

・想像していた以上に、特に間藤先生の回がおもしろかったです。多角的なものの見方のあり方もあらためて教えていただき、よい刺激になりました。(H氏 マスメディア業)


よくある質問

Q.初回のフィールドワークの場所はどこですか?
→京都市内の京都大学所有林を予定しています。集合時間や場所は申し込み後にご案内致します。

Q.農業や土壌に詳しくなくても大丈夫ですか?
→はい。興味のある方でしたらどなたでも大丈夫です。わからないことがあれば先生に質問していただけますし、後日事務局でも質問にお答えすることもできます。

Q.友人や家族と参加してもよろしいですか?
→もちろん可能ですが、受講料はお一人ずつ必要となります。

Q.準備するものはありますか?
→フィールドワークの時にはアウトドアな服装をしてきてください。また林道を歩きますのでトレッキングシューズなどをお勧めします。その他詳細は申し込み後にお伝えします。

Q.日程があわない場合はどうすればよいですか?
→フィールドワークを含め、すべての講義は録画しますので後日見ていただくことも可能です。

Q.クレジットカードでの支払いはできますか?
→すみません。銀行振込のみとなります。


お申し込み・お問い合わせ

・以下「お申し込みはこちらをクリック」をクリックするとgoogleフォームの画面になります。各項目入力後、「送信」ボタンを押してください。

・3日以内にメールが返信されます。メールに振込先が記載されていますので銀行振込にて受講料をお振込みください。

・振込を確認でき次第、申し込み完了となります。申し込み完了の際にもメールをお送りします。

・講座内容について問い合わせをしたい方は「問い合わせはこちらをクリック」をクリックしてください。問い合わせ内容欄に質問を記入いただければ数日内にメールかお電話にてご返事致します。

※万一、メールの返信が無い場合は以下の電話番号までご連絡下さい。

0120-944-083

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